日記を読むのが好きです。
お店の一角を日記本のエリアにしちゃおうかな・・・と、わりと本気で考えています。

日々の暮しを淡々と綴ったものを読みたいという人は、その昔から一定数いるようで、「土佐日記」「更級日記」「蜻蛉日記」など平安時代から現在に至るまで、日記文学というジャンルが存在します。

店主の若かりし頃(インターネット老人会所属)は、自身のホームページ*で日記を書く人も多く、楽しみにネットを巡回していましたが、最近はSNSに気軽に投稿することができるようになったためか、読み応えのある日記を書く人が減ってしまい、とても残念に感じています。

*「ブログ」という言葉が生まれる前ですね、「ジオシティーズ」とか「さるさる日記」とかの時代です…わかる方どのぐらいいらっしゃるのかな?

この記事ではホントバの書棚に置いてある日記をご紹介していきます。
気になる本がありましたら、ぜひお店で手にとって御覧ください

「波止場日記 労働と思索」 エリック・ホッファー

アメリカの社会哲学者であり港湾労働者であったエリック・ホッファー(1902年-1983年)の1958年から1955年に書いた日記をまとめたもの。日々の静かな生活のなかで思索を深めていく姿には読んでいるだけで背筋が伸びます。
この本では「知識人」に対して彼が抱いている気持ちと、その問題意識があちこちから見えてきます。

 ここで、私が知識人という言葉で何をさしているかを述べておきたい。私のいう知識人とは、自分は教育のある少数派の一員であり世の中のできごとに方向と形を与える神授の権利を持っていると思っている人たちである。知識人であるためには、良い教育をうけているとか特に知的であるとかの必要はない。教育のあるエリートの一員だという感情こそが問題なのである。

ホッファーのプロフィールについては、以下の記事で取り上げています。

「独学」興味ありませんか?

「独り居の日記」 メイ・サートン

詩人メイ・サートンの日記は何冊も刊行されています。
自然を愛する静かな暮らし、パートナーへの熱い思い、そして書くことへの情熱が綴られた彼女の日記は、根強い人気があります。
なかでも「独り居の日記」は、1991年初版発行以来長く読みつがれ、2016年には新たに新装版が出版されました。メイ・サートンの何冊もある日記のなかでもっとも人気のある本です。

以下の画像は、店主が若い頃から読んできたメイ・サートンの日記。
だいぶ色褪せていますが、手放せません。

店主私物メイ・サートン日記

店主私物メイ・サートン日記

「独り居の日記」も古いもので装丁も今のものとは異なります。

 思うに、生活に十分安定した、実りある骨組みさえあれば、どんなに激しい風がきても、その破壊的な影響に耐えることができるのではないだろうか。多くの人にとって、これは彼らの職業が果たす—————ストレスを救う一定の仕事を与えられることによって。私も生きのびるために、私自身のそれを創造しなくてはならない。そんなわけで、今は手紙を取りに行き、車を左スタートさせる時間である。

「シベリアの森のなかで」 シルヴァン・テッソン

著者のシルヴァン・テッソンは冒険家で作家という肩書をもっています。
「冒険家」って職業を語る言葉なのだろうか?と思いつつ読み進めていくと、この人の人生・生き方こそが「冒険家」なのだと納得させられます。
寒い時期に読み始め、シベリア・バイカル湖湖畔の寒さの描写にますます寒く感じるか、我が家の温かさに幸せをしみじみと感じるか…。
独りの静かな時間は、豊かな時間でもあり、贅沢な時間。

 四十代になる前に森の奥で隠遁生活を送ろうと心に決めていた。 シベリアは北杉岬の先端、バイカル湖の岸辺に面した小屋で、ぼくは半年のあいだ暮らした。村からの距離は百二十キロメートル。隣人も道路もなく、訪ねてくる者もあまりいない。冬はマイナス三十度、夏は岸辺に熊の姿。これぞ天国だ。 小屋には本や葉巻やウォッカを持ち込んだ。その他は――空間、静寂、孤独――最初からそこにあったものである。

「若き日の日記」「日記・書簡集」 神谷美恵子

20代の頃、神谷美恵子さんの著作にかなりハマり、ほぼシリーズの大半を持っていたのですが、スペースの関係で随分と手放し、今手元にあるのは5冊ほどとなりました。
名門の実家、学者の夫、ご自身は語学スキルも高く教養深く、そして何よりハンセン病の研究で知られた精神科医の神谷美恵子さんは、読めば読むほどスーパーウーマンです。
家事・育児はては夫の世話も手抜きゼロ、仕事も精神科医としてはもちろん、翻訳・執筆でも素晴らしい業績を残されています。

到底自身のロールモデルにはなりえない存在ですが、常に自分自身を振り返り、自分自身の望みと周囲への気遣いを深く考え、倦まずたゆまず前に進むその姿勢には、随分と考えさせられることが多く何度も読み返しました、最近はめったに読み返すこともしていませんが手放せない一冊です。

積読本となっている日記たち

本を読むのが好き。でも、本を買うのはもっと好き。
という困った嗜癖を持つ店主です。

ご来店いただいたお客さから、「ここにある本は全部読んだものですか?」と聞かれますが、答えは「No」です。
お店にある一番大きな本棚は、読書会のパートナーでもある友人から譲っていただき、その際に友人が譲ってくれた本もありますし、自分で買った本ではあっても忙しくなったり、他に興味が移ったり、でもいずれはゼッタイ読むぞ!と思っている積読本がかなりあるのがホントバの本棚です。

日記に関しては現在、以下の2冊の日記が積読となっています。

ヴァージニア・ウルフに関しては、読みやすいものではないので時間があるときにじっくりと…と思っていてそのまま積読。

群ようこさんの「還暦着物日記」は、読むと買い物したくなりそうで怖くて手に出せず現在に至ります。
特に今のように店で毎日着物を着ているといくらでも着物の買い物に対する言い訳ができそうで、恐ろしくて…。